第1章 夏の思い出
「ちょっと!!スイカ落とさないでよッ」
「…あっ…ごめん」
「たかちゃん、なまえちゃんが浴衣着て可愛いから驚いたんだろ」
「そうなの?えー!可愛いって言ってくれても良いんだよ?」
「手が滑って落ちただけだから…」
ばぁちゃんは嬉しそうに笑い、オレは心を読まれたようなその言葉に顔が赤くなって、夕焼けが隠してくれるように願って居た。
「どうして、浴衣なの?」
「今日、お祭りがあるの。町中に提灯有ったでしょ?」
「確かに町中提灯だらけだったね。なまえちゃんは友達とお祭り行くの?」
提灯の事を言われたが見ていないとは言えなかった。本当は、任務で町外れに有る造船工事に忍び込んで情報を得て居た‥…町を歩いていないオレは提灯の存在など知りもしなかった。
「2人で行ってくればいい」
ばぁちゃんがへへへと笑う。
「なまえちゃんお友達みんな都会に行っちゃったから同じ歳の子居ないんだよ…だから、今日だってたかちゃんの事誘いたくて浴衣頑張って着てたんだから」
「ば、ばぁちゃん!!言わないでよー」
「そうなの?」
オレの間抜けな声になまえちゃんは顔を真っ赤にさせ、恥ずかしいのかウルウルとした目になる。
口がキュッと閉じて俯いて。
その表情や態度にこちらまで顔が赤くなってて指先で頬をかきながらポツリと漏らす
「い、一緒に行く?」
その一言を言うのに全くスマートに言えない自分に笑ってしまう。
それなのに、なまえちゃんは嬉しそうにニッコリと笑って
「行きたいっ!」
なまえちゃんの笑顔はキラキラしていて少しだけ胸が締め付けられるような感覚がした。