第1章 夏の思い出
この島にきて6日が過ぎた、ばぁちゃん、なまえちゃんとの生活に慣れ始めてきてた頃だった。
任務は遂行しなければならないため、日中は観光のフリをして情報の収集。
日が傾いて来たらこの家に戻るをこの4日繰り返して居た。その時間の共有でばぁちゃんは客ではなくオレを孫のように扱うようになった。
なまえちゃんはと言えば、ばぁちゃんの態度を見てから“敬語”を止めた。
「ただいまー」
「ちょっと手伝ってくれるけ?」
「いいよ、オレに頼むなんて珍しいね」
ばぁちゃんは笑いオレを客間へと連れて行く
「ばぁちゃん、これで良い?」
ついて来れば照明の電球を変えて欲しいと言う願いだった。
キュルキュルと電球を回して外し新しいものを付け替える。剛翼でスイッチをカチリと入れれば目の前で灯りが光る。
周りを見回したのにばぁちゃんの姿が見えずに慌てて脚立から飛び降りてキョロキョロと見回す
廊下へ出ると、お盆に麦茶とスイカを持ちゆっくりと歩いていた。
剛翼を飛ばしてお盆を代わりに受け取る
「わるいねぇ、たかちゃん」
「たかちゃん!?…え、ばぁちゃん、それオレの事?」
「やーけ?ほら、お茶にしよ」
「オレ、そんな風に呼ばれる事ないからちょっと驚いた、けど、ばぁちゃんなら良いよ」
縁側に座わり外へと足を投げ出して、照れを隠すように麦茶のグラスに口をつける。最初こそ砂糖が入っているのか甘い麦茶に驚いたが慣れればどこか心地のいい味だった。
夕暮れになりカナカナと鳴く蝉の声が聴こえ、生ぬるい風が吹き抜ける。
口に入れたスイカが塩がふってあるのか塩味を感じてその後果物独特な甘みを感じる。
「なまえちゃーん!お茶だよー」
「今行くー」
遠くから聞こえるなまえちゃんの声
スイカの果汁が親指に垂れてペロリと舐め上げて、庭を見つめる。
隣になまえちゃんが座りスイカを手に取る。チラリとなまえちゃんへと視線を移せば、白地に百合の紋様が入った浴衣を身につけていた。髪の毛が緩く束ねられ薄く化粧がされている。
思いがけない服装に、息を呑んでスイカの破片が庭へと落ちてペシャリと潰れる。