第1章 4月
4月も半ばに差し掛かった金曜日のお昼休み。
私の携帯がぶるぶると震えだした。
表示は着信をあらわしていて、その相手は―…
「もしもーし。マイキーどうしたの?」
「お花見行こうぜ。」
人を振り回すことが大得意な男は、いつも唐突である。
「はい?」
「どうせ暇でしょ?」
「マイキーは私を何だと思ってるの?」
「うーん…。なっつん。」
「うん、正解。」
なんて、どうでもいい会話は肯定の意味をあらわすことをマイキーは知っている。
「明日。11時に迎えに行くから待ってて。あ、弁当よろしく。」
「みんなも行くんでしょ?どれくらい用意すればいい?」
「いや、二人。」
「わかっ…え?」
ぷつん、という音の後はツーツーと電話が切れたことを知らせる音。
マイキーが私と二人で行こう、なんて珍しすぎて驚きでしかない。
断られると思ったのか、私の返事の前に電話は切れてしまった。
まぁ、断る理由もないし、花見も好きだから、どんなお弁当にしようかな…なんて今からわくわくしている。
きっと、マイキーのことだから何も持ってこないんだろうなぁ、なんて予想を立てると、さっそく適当なノートの裏を一枚破いて、明日の持ち物と今日の買い物のリストを作った。