第1章 4月
部活動の時間も終わり、続々と部員が帰宅する中、
カタカタとミシンの音が響く。
私と三ツ谷くんのミシンの音だ。
また、二人だけの空間に胸が高鳴りながらも、服を作る手は止まらない。
⋯⋯⋯⋯、ぱちんっ
糸を着る音が響くと、私は満面の笑みを浮かべる。
「できた!」
外を見れば、もう日は傾き薄暗くなっている。
中学の頃は、下校時刻がーとかうるさかったが、高校に入ると特に何も言われることはなくなっていた。
そのため、時刻は19:00を指しているが、何も問題ない。
「帰るか。」
ミシンをいじっていた三ツ谷くんも、ぐっと伸びをして片付けを始めた。
「え?終われるの?」
「おー。また明日でもいいからな。」
その言葉は、私を待ってくれていたことを意味していたのではないかと思い、どくんっ、と胸がなる。
そんな嬉しいこと、ある?
それとも私の勘違い⋯?
私も使っていたミシンを片付け終わると、一足先に片付けを終えた三ツ谷くんが肩にかばんをかけて近寄ってきた。
「この生地かわいいな。」
「でしょ!そう思って⋯はい。」
「は?」
「ワンピース作ったの。ルナマナちゃんに。」
「マジかよ。あいつらきっと喜ぶよ。ありがとな」
作り終えた2つのワンピースを袋に入れて三ツ谷くんへ差し出すと、三ツ谷くんは驚いた顔をしたがすぐに目は細められ、とてもキレイな笑顔を浮かべた。
それは、まさにお兄さんの顔。
こんな素敵なお兄さんを持てたルナちゃん、マナちゃんは幸せだろうな。