第2章 5月
部屋は大部屋を取ってあり、みんな一緒の部屋らしい。
まぁ、こんな大部屋で変なことする野郎はさすがにいないだろう。
部屋に着くまでに、桜はみんなに自己紹介をしてすっかり仲良くなっていた。
人懐っこいというか、親しみやすいというか…、それが桜の良いところだと私も思っている。
旅館に着いたのは、すでに陽が傾き始めているころだったため、まずは温泉に入ろう、ということになった。
ここ、熱海の温泉はとても気持ちいい。
「温泉こっちだよ!」
桜の案内のもと、大浴場までやってきた。
「じゃぁ、また後でー。」
「タケミチくん、ちゃんとあったまってね。」
エマ、ヒナがそれぞれ声をかけて桜の後を追って女湯の暖簾をくぐろうとしたが…
「マイキー?混浴じゃないよ?」
「バレたかー。」
私の後ろからマイキーがついてくる気配を感じてジト目をプレゼントする。
マイキーは、ドラケンに首根っこ掴まれて「後でなー」と言いながら引きずられていった。
「もう。」
「マイキーはすぐふざけるんだから!」
呆れる私と、苦笑いで言うエマ。
もちろん、マイキーが本気で入ろうとしたなんてことは誰も思ってはいない。
場を明るくしようとしてくれていることは、みんなわかっていた。