第1章 4月
「スカートのこと?」
「おー。」
「可愛いでしょー!!」
くるりと一回りして見せると、
スカートはふわり、と舞う。
「ちょ、おまっ⋯」
片手で目元を覆う三ツ谷くん。
「ん?別に見えてないでしょ??」
「そういう問題じゃねぇだろ」
昨日、姿見を前になんどもくるくると回り、今日を楽しみにしていたんだ。
どのくらいの勢いで下が見えてしまうかは重々承知している。
三ツ谷くんは、ニカッと笑いながら言う私に、困ったような笑みでため息を一つ。
わかってる。
彼だってお年頃の男の子。
もちろん、それを承知でしたのだ。
そろそろ、少しくらい意識してほしいものだ。
ー三ツ谷side
学校の唯一の楽しみは、部活動。
今日も家庭科室に一番乗りで、それに満足するとふっと笑みを浮かべて活動の準備にとりかかる。
別に、誰が一番でも問題ないし、そんなことに興味もねぇけど、一番という響きは悪いものではない。
ミシンを机に広げていると、扉がガラッと音を立てて二人目の部員が現れた。
黛千夏だ。
彼女の変化にはすぐに気づいた。
去年まで長かったスカートの裾が短くなっている。
それは、彼女を想う自分には刺激の強いもので、
目を見開いてしまった。
短いそれは、自分も嬉しい案件だがその白い肌が他の男にも見られると思うと、多少複雑ではあった。
白い足に目が持って行かれそうになるが、じっと見ているのも変態だと思われてしまう。
そんなのは御免だ。
目が下へと向かないように、彼女の顔を見て話をするが、
そんなのはお構いなしにくるっと回る彼女。
「別に見えてないでしょ?」
って、確かに見えてはいないが、見えそうで見えない⋯それが一番毒であることなんて、千夏にはわからないんだろうな⋯
ー三ツ谷side end