第1章 4月
ピピピピ…ピピピピ…
部屋に鳴り響く機械音を止めて起き上がると、ぐっと背伸びをした。
弁当と二人分の朝ご飯を作るために、いつもよりほんの少し早起きで眠たい。
自室の扉を開けると、タマゴのいい匂いが鼻をかすめた。
「おはよ。よく眠れたか?」
「あ…おはよ…。」
すでにスウェットから制服に着替え、キッチンで器用に料理をしている彼。
きっと、いつもルナちゃん、マナちゃんのご飯を作るために早起きしてるんだろうな。
「勝手にキッチン借りた。弁当の材料っぽいのは使ってねぇから。」
「すごく、おいしそう!」
私もすかさずキッチンに入ると、すでに朝食は完成していた。
「食べたら弁当作ろうな。俺も手伝うから。」
「ほんと!?ありがとー!」
一人で弁当を作るのは少し不安があった。
二人分のお弁当なんて作ったことがないから。
三ツ矢くんのおいしい朝食を食べて、食器を片付けてくれるというので、お言葉に甘えてその間に着替えを済ませた。
昨日買った白い膝上までのワンピース。スカートの裾には、小さいピンクの花がちりばめられていた。
そして、その花の色に合わせてピンクのカーディガンを羽織った。
「三ツ谷くん、ありがとう!」
「お、おう。なんか、気合入ってんだな。デートみてぇだ。」
「デートって!違う違う!」
デートなんて人生でしたことがない。今日も友達と遊びに行くくらいの感覚だ。
三ツ谷くんは聴きなれない言葉に顔が火照るが私の様子を苦笑いで見ていた。