第1章 4月
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これはお父さん、お母さんが仕事に都外へ出る時の話。
今までお父さんは伯父さんが経営する会社を親会社として、そこの子会社の社長をお祖父ちゃんから引き継いで務めていた。
でも、都外にも子会社を立ち上げることになりそちらの社長になってほしいと言われたのだ。
つまり、転勤である。新しく立ち上げるのだから、信頼のおけるお父さんに頼みたい。とのことだった。
名誉なことだと二つ返事だったが、高校の決まっていた私は、東京に残ることを選択したのだ。
「千夏…、寂しくなるわね。連絡するからね。」
「ありがとう、お母さん。でも、海外行くわけじゃないし。遊びに行くよ。」
寂しがるお母さんと一度ハグして、お父さんへ向き直る。
「お年頃なお前を置いていくのは、少し気が引けるが。さっさと男作ってくれれば安心なんだけどな。」
「お父さん…それ関係ある…?」
「あぁ!マイキー君はどうだ!?ドラケン君や場地君も強いんだろう?」
「あのねぇ…。」
どうやら、彼氏を作って一緒に住めばいいではないか、ということらしい。
まだ高校生の娘にいうことではない気がするが、厳しすぎるよりはいいか。と思っている。
「三ツ谷君!彼はどうだ!?とっても家族思いの良い子じゃないか!」
「お父さん…。東卍メンバーにあったの数回なのになんでそんなことわかるの…。」
「人柄なんて、見ればわかるさ!」
三ツ谷くんの名前を出されると、私の顔は熱を帯びていく。
さすが子会社と言えど社長を任せられるだけあるな、と感心してしまう。
「三ツ谷君か。そうかそうか。」
「もう…。」
私の反応で見抜いたお父さんは、ニヤニヤと嫌ぁな表情を浮かべていた。
「じゃぁ、もしも三ツ谷君が泊まりに来たら、ほら。」
「鍵?」
「お父さんがカギをかけた部屋が一つあっただろう?そこを開けてみなさい。三ツ谷君が来るまでは開けちゃだめだからな!」
「?…わかった。っていうか、三ツ谷くん三ツ谷くん言わないで!違ったらどうするの…。」
「その時はその時だ!じゃ、元気でやりなさい!」
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