第2章 小さな村での夜のこと
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佐助くんは忍業務に出掛けた。
明日の朝には戻って来ると言うけど、
とてもとても不安だ。
彼とは一緒にタイムスリップしたはずなのに、私より四年も早くここへ来ていた。 それにしても馴染み過ぎな気はするけれど、今は彼以外頼れる人がいないので とにかく彼から一瞬たりとも離れないようにしたい。
そう思っていたのに速攻置いていかれた。
―――
……
「 お茶でもいれましょうか? 」
「……」
「 …じ、じゃぁ 入れますね…」
この部屋を貸してくれた村の方が持ってきてくれた急須にお茶の葉を入れて見たものの、
…ケトルがない、ティファールッ。
「お ゆ…、お湯はどうしましょ… ハハハ」
転がった石をおもむろに叩き付けてみたけど、こんなんで火が起こせそうもない。 火が着いたところでどうしたら良いのかも分からないし。
…結局、
ずっと冷ややかな目でこちらを見ていた謙信様が手際よくお茶を入れてくれた。
「うわぁ 流石です! 火を起こす姿 かっこ良すぎて見惚れちゃいました。謙信様の入れてくれたお茶最高です!」
「……」
とりあえずベタ褒めした。美しすぎる顔の男が、優雅に火を起こす姿は眩しすぎ見惚れたのは本当だ。 相変わらず寡黙を貫く謙信様だったけど、お茶を飲みながら当たり障りのない会話… いや、独り言を続け間を繋いだ。
そしてお茶会も終盤に差し掛かったときだった
……
「 …フッ、これくらい誰にでもできる。」
ん? 今なんと――?!
「 火を起こすくらい容易い事だ。」
しゃ、喋った!!
――随分と会話に時差は感じますがっ…
「はっ初めて見たので、あとで教えて下さい。」
「 断る。」
「えっ?」
「火は俺が起こせばいい。だから教える必要はない。」
「あ… はい。」
何だか分からないけど、私と話してくれるようになって本当に良かった。