第1章 出会って三日
――…
お城がある春日山までは数日かかる。
私がいなければもう少し早く進めるんだろうけど…
馬に乗るのも初めてで、この距離の移動はかなり過酷だった。 それで武田信玄と真田幸村の二人には先に春日山へ戻ってもらい、私は 佐助くんと上杉謙信に 途中休憩多めで連れ帰ってもらえることとなった。
――休み休み移動していたものの、
慣れない環境に私の疲労は著しく 途中小さな村で一日休もうと佐助くんが言ってくれた。
――――
――…
「絵里さん明日の朝までには戻って来るから。」
「 …え、朝まで戻って来ないの?」
佐助くんは私が体を休めてる間、調べたい事があり ついでに私の着替えも調達してくるから出掛けると言い出した。
まだ昼過ぎなのに、明日の朝まで戻って来ないとはあんまりじゃなかろうか… 私とは一言も喋らない、寡黙で恐ろしく顔の綺麗な男と 丸一日二人で過ごす自信がない。
不安気に そして行かないで欲しいとの気持ちを込めて佐助くんに視線を向ければ、なんだか自信に満ちた返答が返ってくる。
「 大丈夫。謙信様なら 大丈夫だから。」
…大丈夫? 謙信様なら大丈夫? なにそれ。
「謙信様は大の女嫌いなんだ。…心配しないで。」
え、謙信様は女嫌いなの?
だから私とは喋らない?
それで… なぜ大丈夫だと思うのかしら?
心配したほうがいいと思いますけど。
「まかり間違っても謙信様はそういうことをする人じゃないから。 僕が保証するよ。部屋も仕切られてるし、夜は絵里さんはあっちの部屋で寝るといい。」
そういう心配をしてるんじゃないんだけど…。
でも確かに、出会ったばかりの男と二人で夜を過ごすのも不安だわ。
――…
「 では謙信様、なるべく早く戻って来ますので その間絵里さんをよろしくお願いします。」
「…あぁ、心配無用だ。」
謙信様はとても強い人だから 彼の近くにいれば安全だ守ってくれる、そう言って佐助くんは並々ならぬ信頼を寄せた上杉謙信に私を託して出て行った。
――しかし、
佐助くんは上司である上杉謙信の事を、
全くもって分かってはいなかったのである。
翌朝帰って来た佐助くんは入口で愕然としていた。
…部屋に脱ぎ捨てられた衣類
裸で一つの布団にいる男女… そして泣く女。
上司による婦女暴行現場を目の当たりにした佐助は震えていた。