第1章 My destiny
今日は、TRIGGERの3人とデートプラン1次案を打ち合わせる日だ。
私は、それぞれの曲に合わせたコディネートプランを携えて、八乙女事務所にやって来た。
彼らのデートプランの相談役を務めることもあり、ここ数日、改めて彼らの曲を聞いていた私。
「楽がSOSを出したのも、無理も無い」と、思った。
むしろ、天に有利な企画かもしれない。
それぞれの楽曲は、
楽:幸せでいて
天:U COMPLETE ME
龍:Riskyな彼女
である。
天の曲は、歌詞の中に具体的なシーンが描かれている。
ただ恋人の誕生日デートを描いた楽曲なので、秋に特化した演出は避ける手間がかかる。
秋に誕生日を迎えるファンが、得をしてしまうからだ。
一方の楽の曲は、別れた恋人へ宛てた曲だ。
出会った頃が「夏の日」なので、秋のデートプランという設定は流れとして自然。
しかし、別れた恋人との思い出を悲しむ演出だけは、避けないといけない。
世間が求めるのは、あくまでも「楽しさ」なのだから。
(せめて「アソシエイト」だったら、良かったのに。楽も苦労が絶えないわね)
最後に龍之介。
実のところ、私は彼の曲が一番、難易度が高いと思っている。
この曲は、昔で言うところの「道ならぬ恋」を歌っているのだ。
八乙女社長と姉鷺さんが決めたプロモーションとはいえ、あまりにも本来の龍之介からかけ離れた楽曲だけに、私は大いに頭を悩ませた。
他の2人はNG演出が明確だが、龍之介に至ってはNG演出ではなく、彼自身がそもそもプランを練れるのかが心配に思えたからだ。
あの場で楽のようにSOSの声も上げず、むしろ私も含めたメンバーのフォローにあたっていた龍之介。
その人柄の良さを改めて思うと、なんとも縁遠いテーマだ。
(というか、これって公にデートできない2人の話よね…デートプランを練る以前の問題では?)
私は彼への提案資料だけ、真新しさの欠片もないステージ衣装を作った時に用いたイメージ資料のみを、用意するに留まっていた。
(とにかく龍之介と、とことん話して決めるしかない!)
そう決心して、私は会議室に入っていった。