第1章 My destiny
指定された部屋の前についた私はベルを押そうとしたが、その動きを躊躇う。
(押して良いんだっけ?むしろ、ラビチャで知らせる?)
全てが初体験のシチュエーションに、私の思考回路は大混乱し始めたからだ。
その時、目の前の扉が勢いよく開いて、私はぶつかりそうになった。
「相変わらず生真面目な子よね、サラちゃんは。まぁ、そこが可愛いんだけど」
『あ…あね…さん!?』
扉が急に開いたことに加えて、予想外の人物が登場したことで、私は図らずも舌ったらずな口調になる。
姉:「ちょっとー!サラちゃん。私、極道の女になったつもりは、無いんだけど…大丈夫?」
そんな私の様子を楽しむように、姉鷺さんは私の頬に両手を添え、顔を覗き込んできた。
姉:「うん。少し緊張しているけど、いつも通りね。まぁ、さすがスタイリスト。シチュエーションに合わせた服とヘアメイクのセンスは、お見事ね」
『あ…ありがとうございます』
なぜ褒められているかもわからず、反射的に私はお礼の言葉を口にする。
そんな状況理解もできていない私に構わず、姉鷺さんは私を部屋へ引き込んだ。