第1章 My destiny
「さすがサラ!いつもと違う雰囲気だな」
「うん…君って本当に、化けるよね」
『え?えぇ?!』
姉鷺さんに連れてこられた部屋に居たのは、これまた予想外の人物2人だ。
私は無意識に頬をつねっていた。
楽:「おいおい、夢だと思っているのか?」
天:「まぁ、普通じゃ有り得ないよね。オフのTRRIGERが揃っているホテルに、呼び出されるなんて」
姉:「2人とも、それくらいにしなさい。今日の私たちは、黒衣なんだから!」
(こんなに色々な意味で目立つ人たちが、黒衣になりきれるはずがない!)
心の中でツッコミを入れ、私は痛みを感じた頬を撫でて現実だと再確認する。
(それにしても、龍之介は居ないのかな?)
私が不思議そうな顔を浮かべていたのだろう。
それに気づいた姉鷺さんが、意味ありげな表情で私へ視線を向ける。
姉:「もうサラちゃんったら、そんなに気になる?龍のこと」
『気になると言いますか…どちらに、いらっしゃるんですか?』
目の前で起こっていることに、まだ思考が追いついていない私。
普段以上に丁寧な言葉で返事をしていた。
姉鷺さんは口の端で軽く笑って見せてから、部屋の奥へ呼びかけた。
姉:「ほら、龍。サラちゃん、来たわよ。こっちに来なさい」
すると、いつも龍之介が纏う香水の香りと共に、緊張した面持ちの彼が現れた。
龍:「えっと…いらっしゃい…サラちゃん…」
楽:「お家デートかよ」
天:「お家デートじゃん」
姉:「黒衣は黙っているの!」
すかさず、容赦のないツッコミが入る。
私は、彼らの他愛のないやり取りに自然と笑みが溢れた。
そして、さっきまでの緊張と思考回路が混乱していたことを忘れて、とびきりの笑顔を龍之介に向けた。
『今日は誘ってくれて、ありがとう!』
龍:「うん。こちらこそ、来てくれて嬉しいよ」
私につられて、龍之介もやっと笑顔になる。
楽:「サラも生真面目に返すなよ…」
天:「設定無視して、2人だけの世界に入っているね」
姉:「あんたたち、口にテープ貼るわよ!」
相変わらず黒衣に徹しない2人に、姉鷺さんの鉄槌が下されそうになる。
目の前で繰り広げられるコントのようなやり取りに、龍之介と私は顔を見合わせて笑い合った。