満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第37章 血鬼術を解いてよ宇髄さん2※
◇
「わっ、びっくりしたぁ」
「…入れ」
ふと気配を感じて襖を開けると、そこに立っていたのはお盆を持った波奈で、襖が開いたのに目をパチクリさせて驚いている。
お盆の上には熱燗とお猪口が乗ってある。
「…雛鶴さんが、持って行ってねって…」
「…あぁ、そうか」
湯浴みの後の、ほんのりと桜色の頬と、ふんわりと香ってきた甘い匂いに一瞬たじろぐ。
唇の赤い紅と、身に纏っている白地に藍色で朝顔の絵柄の浴衣をみるに、嫁たちに色々と塗りたくられて着せられたらしい。
…あいつら楽しんでないか。
酒をお盆ごと受け取り、自室の縁側に座らすと、波奈はすぐに酒を注いだ。
「どうぞ、音柱様」
「どうも」
それを受け取り一口飲むと、波奈がじっと見つめてくる。
「…やんねぇぞ。ガキには早ぇ」
「えっ!…だめですか?」
「だめ。俺は毒も酒も効きにくいから強いのしか飲まねーの」
そういうと、波奈はごく残念そうな顔をした。
酔ってしまいたかったのに。と小さく呟く。
「…なら、一つ頼んでくれるか。そしたら一口やるよ」
「ん?なんでしょう。頼みごとですか」
「『音柱』じゃなく、名前で呼んでくんねーか」
「…おなまえ、ですか…?」
「そ。天元」
「む、むむむりむりむりむりです!柱に名前でなんて、」
「どうしてもか」
「無理です、それは、ほんとに」
自分の顔の前で手をブンブン振り回している。
ならこっちだって考えがある。
「でもなあ…音柱様だとその気にならねえんだよなあ…」
「えっ……」
「任務って感じで。天元だと恋仲みたいでそそるだろう」
「………」
どうだ、と波奈を覗き込むと、顔を赤らめて考えている。
その桃色に染まる頬が可愛くて、ふいに頬に手を伸ばすと、波奈はぴくっと驚いた。そのまま親指で赤い唇をなぞる。
「…てんげんって、言ってみろ」
そう低く言ってやれば、波奈はぶわりとますます顔を赤らめてしまった。震えるくちびるはパクパクしている。
「……っ…」
「ほら」
「…て、…っ」
「うん」
「………て、ててて…っうずいさん!!」
「……あ?」
がくっと肩をすかした。