満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第35章 初夜のあとのお薬※《宇髄天元》
不死川が音屋敷を後にしたのは、お酒も少し進んでの夜中だった。
泊まってくださいと何度も声をかけたが、新婚を邪魔しちゃ悪りぃわと不死川は言う。
柱というものはお酒には強いのだろうか、あれだけ飲んだのに足元はおぼついてはいなかった。
そんなことがあったから、波奈はすっかりと自分の股の間が痛いことなど忘れてしまっていた。
思い出したのは湯浴みのときで、身体を洗うときにそういえばと思った。痛みはほぼ消えている。これなら薬は塗らなくても良いかもしれない、と楽観的に考えた。
「ーーーなんだこの薬は」
「…あっ!」
寝室の襖を開けると、宇髄が布団の上であぐらをかいて、薬を手に持ち聞いてきた。
波奈はすっかり薬を机に置いていたことなどとうに忘れていた。
まさか昨日の夜のせいでの薬だなんて当然言えず、波奈は固まってしまう。
「どこか怪我したのか」
宇髄は心配そうに波奈を見つめて詰め寄った。
この薬はあの死闘でよく使った薬で、それを彷彿させるのだろうか。真剣な眼差しで問い詰めてくる。
「いえ、あの…っちがうんです、怪我ではなくて…っ」
ぶわりと赤くなりながらモゴモゴ言うと、宇髄はハッとしたように目を見開いた。
「…ふうん…。じゃ、どこに塗るつもりだったのか言え」
先程の心配で真剣な眼差しとは違い、目の奥は楽しげである。
波奈は宇髄を見て、この人はすこぶる勘が良いことを思い出す。
きっともう、この人は全部わかった上で、わざと言っているのだ。