満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第34章 くらし、始まる※《宇髄天元》
固まる波奈に、宇髄はゆらりと近づいて、がしりと両頬を包み込んだ。
「…へっ…っ!?」
そのまま宇髄の顔が近づき、波奈は思わず声を出した。
それから宇髄は波奈に口づけをする。
無論波奈は声を出せず、頭はもう真っ白だ。
呆然とする波奈の口に、宇髄は素早く舌を入れ込んでじっとりと口内を堪能するようにはい、波奈はびくりと身体を強張らせた。
「…っは、…んむ、…っ」
何遍も唇の角度を変えて、何度も口付けをしてくる宇髄に、波奈は必死にやめさそうとしたが、宇髄の胸を押した両手は力が入らない。
そのうちに息を止めるのが苦しくなり、涙が溜まった。
「…鼻で息しろよ」
そう言い宇髄が唇を離した隙にハッハと呼吸をすると、宇髄はまた唇を押し当てて、舌を入れ込んだ。
くちゅくちゅと唾液が擦れる音がするし、宇髄の大きな手はいつの間にか波奈の背中を撫で、その下の方まで降りてくる。
波奈はその手の行先を案じて大慌てで、小さく宇髄の胸を叩いて抵抗した。
離れた舌からツと唾液の糸がひく。波奈は解放された口でハアハアと酸素を求めた。
心臓がバクンバクンと煩く騒いでるというのに、目の前の宇髄は全然余裕そうで、どこか意地悪そうに笑った。
「…っ、あ、あ、あさから、やめてくださいよ、っ…」
心の準備というのがあるのだ。そんないきなりじゃないですか。
波奈は恨めしく宇髄を見つめると、宇髄はクックと可笑しそうに笑う。
「あのなあ、昨日初夜だったっつーのに、誰かが俺以外の名前を呼びながら泣き喚いてすやすやと寝るもんだからこっちは完全に昇華不良だっての」
朝からそりゃあがっつきたくもなるんだよ。
そう言われて波奈はきょとんとしてしまい、その後であっと思い出したように顔が赤くなっていく。
昨晩、『しのぶさんしのぶさんしのぶさん』と言いながら泣いて、宇髄は背中を一晩中とんとんと撫でてくれた。
それがあまりにも心地よくて、思い切り感情のまま泣いてしまったのだ。
初夜であることなんかすっかりと忘れてしまった。