満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第34章 くらし、始まる※《宇髄天元》
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立派な音屋敷の、1番日当たりの良い部屋を与えられた。
「まあ、好きに使え」と優しく笑い、波奈は恐縮した。
2人の生活は祝言も行わない静かな始まりだった。
お館様に報告をして、周囲にも打ち明けた。
籍をようやく入れた、と。
ようやく、というのは、波奈の蝶屋敷での業務が落ち着くまで、宇髄を待たせていたので。
祝言はしないことに少々周囲の反対もあったが、波奈はお祝いしてもらうのは恥ずかしくていたたまれないので、となんとか断った。
宇髄は不服そうだったが。
波奈は大好きな宇髄との生活に、少々緊張してしまう。
「お口に合うかわかりませんが…」
と出したのは夕飯で、台所にあるものを使って調理した。
「慣れない台所で大変だっただろう。こんなに多く。ありがとな」
と宇髄は波奈を労った。
なんてない、ふつうの夕飯であったが、宇髄は全部食べてくれた。
「蝶屋敷で食べたからお前の味は知ってる。美味いと思っていたし、この夕食も美味いよ」と宇髄は言ってくれて、波奈は胸がじわりとした。
料理を作って、それを喜んでおいしいと食べてくれる。
そんなささやかな幸せを噛み締める。
その度に、最終決戦にて無惨にも散っていった命のことがちらついた。