満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第31章 答えはでない《不死川実弥》
『ねぇ!昨日シナセン女の人と歩いてたの見ちゃった!』
『それどうせまた妹かなんかでしょ』
『違うって!年上の綺麗めな女の人だったもん!』
お昼休憩に、お弁当を一緒に囲んでいた友人たちが騒ぎ出す。
波奈はその話題に、どきんと胸を詰まらせてじっと黙るしかなくなってしまった。
『ほらあ!写真も撮ったんだもん!』
『え!まじ!』
『ね!これシナセンでしょ?』
グリンとこちらに向けられたスマホの画面には、
ぼやけた写真が画面一面に映る。
ぼやけていてもその人は明らかに、ここキメツ学園の数学教師、不死川実弥先生の姿で間違いはなかった。
その隣は、ぼやけた横顔しかわからないが大人の女の人が一緒に写っている。
『ね?波奈、これシナセンだよね?』
「う、うん…。そうだね」
『親密そうな2人でしょ?絶対彼女だよね?』
『いやーシナセンって大人の女の人が好きなんだね』
『カナエ先生と噂あったけど案外間違いじゃなかったり?』
友人たちが多いに盛り上がる中、波奈は胸中全く穏やかではない。ズンと重い錘が、胸を押しつぶして苦しい。
もう食欲もなくなってしまった。
それでもなんとか友人たちのその話題に耳を傾けて、笑顔を作り相打ちを打って、その場をやり過ごした。
ねえ不死川先生、この女の人、誰?
昼休憩は終わり、チャイムとともに教室の扉が開く。
5限目、数学III。
昼休憩の話題をすべて持ち去った張本人が、そうとも知らず入ってくる。
「おらァはよ席つけェー」
数学の教科書と、プリントを抱えて、彼は教壇にたつ。