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満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】

第29章 噛みつきたい!【不死川実弥】



波奈が卒業してから、半年が経つ。
不死川の腕にかぶりついてから、とも言う。


おいおい、まじでかよ…。

今から約3年半前の入学式で波奈を見つけて、頭を抱えて項垂れてしまった。

波奈は、前世で不死川を看取った唯一の1人ーーー恋人であった。痣者の命は短く、それでも波奈は不死川の近くにいることを選んだ人であった。

初め、波奈のクラスに授業を行った際、波奈も前世の記憶というのを持っているのかと淡い期待をしたが、俺を見る目は初めて会う人のそれであり、願いは儚く散った。
まあ、鬼のいた残虐な世に、親しかった者に先立たれた記憶などないほうが良いに決まっている、と思い直したが。

大きくため息を吐く不死川に、同僚の宇髄天元はくつくつと面白そうに笑う。

「まさかお前の妻が生徒とはねえ…」

「べつに妻じゃねェよ…」

からかい楽しそうに絡んでくる宇髄にシッシと追いやる真似をした。
不死川は、前世で波奈を置いて去った無念がつねに心の隅につきまとっていた。できればまたこの世で会えるかもしれない、と
そう思いながら24年間生きてきた。

不死川は、それなりの教師としての責務はあるし、誇りもある。
生徒は慈しみ守るべき存在なのだ。決して邪な対象ではないし、生徒とどうこうなるなんて、考えもしない。
想いを告げるなら卒業後…。それまで、自分は波奈の高校生活を見守らなければならない。彼氏ができたり、恋をしたりするのだろうか。前世で、あんなに深く愛し合った人が?考えただけでゾッとしてしまった。




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