満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第27章 乾杯の夜の秘密※【宇髄天元】
「…宇髄さん、好きです」
「…あぁ」
「宇髄さん、大好き…」
「そりゃどーも」
「宇髄さん、ほんとかっこいい、顔が好き」
「知ってる」
宇髄ははじまった、と内心ほくそ笑む。
晩酌開始から約1時間ーーー波奈は目がさらにとろんとしてきて、ソファーに座ってお酒を呑む俺の膝に、いきなり跨るように腰を下ろした。
見つめられる瞳はうるうるとして、頬が上気していてピンク色。
波奈は俺の肩に細く白い手を置いてその近い距離に、俺は柄にもなく胸がギュンと掴まれるのを悟られまいと、スンとした表情で隠した。
それから波奈は、俺の目を見つめて、冒頭のように好きだのかっこいいだの言う。もう何回も。
「…ん、宇髄さあん…」
「なんだよ」
「好き、大好き…」
「はいはい」
「結婚して?」
「ん、っ…ああ」
不意打ちのプロポーズに、少女漫画みたいに胸に矢が打つ。
酔っ払いの戯言にいちいち真に受けることは。
そう、波奈はアルコールをある一定量を摂取すると、普段我慢しているのか知らんが普段は絶対言わない言葉を、まるで恥ずかしげもなく言いたい放題である。
そして彼女は、なんでも包み隠さず、思ったことを口にするのだ。
「宇髄さん、隣の隣のミナグチさんに言い寄られてますよね?知ってるんですから」
「誰だよミナグチさん」
「806号室のミナグチさんですよ!最近よく会うでしょう?」
「…あーー?んー?」
ミナグチさんの顔をぼんやり思い返すが、あまり顔は出てこない。
「私と会った時、ご兄妹ですか?って聞かれちゃったんですよ、わたしそんなに宇髄さんの彼女に見えないんですかねえ」
うっうっと泣く波奈を、面白すぎてくつくつ笑った。
「兄妹じゃなくて恋人ですってちゃんと言ったのか?」
「言えなくてハイそうですって言っちゃって…」
「なんでだよ」
「宇髄さんがわたしみたいなちんちくりんが恋人なの、知られたら困ると思って…」
「ばかか。困るわけねーだろ」
彼女の胸の内は、存外自信がないのだなと思う。
落ち込む彼女を励ますように頭を撫でてやると、さっきまで泣いてた顔が嘘みたいに、嬉しそうににこにこと笑っている。