満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第26章 寝不足の彼女※ 【宇髄天元】
職員室の片隅に、ソファーと机がある。あの宇髄天元が本気で惚れるーーー沢田波奈がソファーに座らされた。
適当に入れたインスタントの珈琲を3人分机に置き、沢田に差し出す。黒いプラスチック製のカップからゆらゆらと湯気が出ていた。
9月といえどまだ暑いが、ここ職員室の中は案外冷房が冷え切り、ホットの珈琲が存外求められるのだ。
「ん、どーぞォ。砂糖とミルクいるかァ?」
「ありがとうございます、不死川先生。ブラックで大丈夫です」
「大人だなァ」
「最近飲めるようになったんですよ」
そっとカップを受け取った波奈は、フーと冷ますようにカップに息を吹きかけている。
波奈はごくりと飲み、フゥ…と染み入るように息を吐いた。
「沢田さん、大学は楽しい?薬学部だから忙しいのかしら?」
「ん、はい、とっても楽しいです。今は夏休みなので勉強のほうは暇なんですけど……、えと、バイトもしてるので、それなりに、忙しいです」
「そう、宇髄先生はどう?大事にしてくれてる?妹がいつも心配しているけれど…」
「しのぶさんが?だ、大丈夫です。すごく、優しいです。しのぶさんに会ったらそうお伝えさください」
少し顔を上気させて、胡蝶先生に丁寧に返していく。そのいらえは学生のときと変わらずとても真面目な印象を受けた。
「そう…なら良いの。その、沢田さん、疲れているのかしら?あまり眠れてないんじゃない?」
…うん?
「えっ…そ、そんなことは、ないですよ」
「そうかしら…でもそのキスマーク、」
「ぶっ!胡蝶先生ーーェ!」
珈琲を思わず吹き出して、慌てて胡蝶カナエを制止した。
胡蝶カナエはきょとんとした顔で俺をみる。
「仮に元生徒に何言ってンすか!」
小さい声で言うが、沢田にはもちろん丸聞こえである。
沢田波奈は茹で蛸のように顔が赤くなり、
「ご、ごめんない、隠したつもりなんですけど、」と大慌てで首を隠す。
ハイネックのサマーニットは、沢田の首元を覆っており、何も見えない…が、耳の後ろの出来立ての赤い鬱血跡は隠せなかったようだった。というか、そのキスマークの存在には気づいてなさそうだった。
「ふふ♡いいのよ!若いわね」
と揶揄われ、沢田はますます顔を赤くして黙ってしまった。