満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第26章 寝不足の彼女※ 【宇髄天元】
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2限目が始まり、職員室はほとんど教員がいない。
今日の2限は空き時間である俺は、次の高校3年生に行う数学の授業の準備をしていた。
コーヒーでも淹れるか、と思い席を立つとき、静かに職員室のドアが開いた。
「し、失礼、します…」
ひょこっと現れたのは、去年卒業を送り出した元俺の生徒、沢田波奈…宇髄天元の恋人であった。
「おォ、沢田じゃねーか」
「し、不死川先生!よかったぁ〜!」
彼女は俺の顔を見るなり、安堵したような顔になり胸を撫で下ろした。
「どうした?んなとこまで…。アー、それ?」
波奈が持っている保冷バッグを指さす。
「そうなんです…すいません、届けようか迷ったんですが…」
「あいつ朝から弁当忘れたっつって騒いでたからなァ。宇髄先生の席は変わってねーから、置いといて」
「あ、はい…!ほんと、ごめんなさい、では失礼します!」
宇髄の机にぽんと置き、俺に向かってペコリとお辞儀をした。
波奈は本校の元生徒ではあるが、恋人の職場に来るのはやはり多少気を使うのか、気まずそうにそそくさと帰ろうと、職員室の出口を目指す。
と、職員室のドアがガラリと開いた。
「あら!沢田さんじゃない。久しぶりねぇ」
「胡蝶先生、お久しぶりです」
「どうしたの?何か用事?」
「あ、え…とですね」
波奈の目が泳いで、気まずそうにしているのを、胡蝶カナエ先生は見逃さない。クスリと笑って、
「もしかして、宇髄先生に会いに来た?」
とふんわりほんわか笑顔で首を傾けた。
「えっ…!」
頬を染め動揺する波奈に、全く構わず、胡蝶は続ける。
「ふふ!この間の飲み会で宇髄先生、あなたのこと嬉しそうに話してたからねぇ!ね?不死川くん」
「…あーー…まあな」
前回の飲み会で宇髄天元が派手に飲みまくって、馬鹿みたいに惚気たのを思い出し、そのときのうんざりした気持ちが蘇る。
「ねえ!時間があるならちょっとお茶しない?久しぶりに沢田さんの話聞きたいわ!
不死川くん、コーヒー淹れてちょうだい」
面倒臭いやつに捕まってしまったな、沢田波奈。
ええ…ても…と困惑している彼女に同情し、胡蝶先生にはいはい、と返事をし、給湯室に向かった。