満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第25章 前世から※【宇髄天元】
ガチャ、と鍵が開く音でハッとした。
時刻はもう22時を過ぎている。
ぱっとソファーから立ち上がる。
するとリビングのドアが開いた。
「おかえりなさい!宇髄さん!」
「おぅ、ただいま」
冷蔵庫をあけてサラダを取り出して、スープに火をかけた。
「お疲れ様です。お腹空いてますよね?今準備す」
「悪い、食べてきた」
その言葉に一瞬止まってしまった。
ーーーまずい、だめだ。普通にしなきゃ。
「そ、そうなんですね。じゃあ明日に置いときますね」
「ごめんな、風呂入るわ」
「あ、はい…」
宇髄さんはすぐに浴室へと消えていった。
『じゃあ夕飯頑張ってご馳走作りますね!』
『こないだ取り寄せたステーキのお肉にしましょ!』
『シフォンケーキも焼いとくので一緒に食べましょうね!』
朝、はしゃいでしまった自分が恥ずかしい。消えたい。
誰とご飯を食べたの?どこに行ったの、本当に仕事なの?
やばい、泣きそうだ。
宇髄さんはこのところずっと仕事で帰るのが遅い。
今日こそ早く帰って、一緒にご飯を食べれると思ったのに。
悲しい気持ちが涙になって溢れ出るのを、グッと堪えた。
ブブブ、と宇髄さんのスマートフォンが震えた。
机に何気に置いてあるスマートフォンを見る。
画面にはメッセージアプリの通知がされており、メッセージが表示されていた。
何気に見てしまったそれを読んで、ぐらりと地面が揺れた。
『ご飯楽しかったですね。次も楽しみにしてます♪♡』
血の気がさーっと引くような感覚になった。指先が震えてだんだん冷たくなる。胸の鼓動がバクバクと鳴った。
そっか、そういうことか。
わたしとは別に恋人との触れ合いをせずとも相手がいるのだ。
ここに置いてもらえているのも前世にあんな約束事みたいなことを、宇髄さんが言ってしまったがための責任で、そして天涯孤独なわたしを同情してのことだろう。
少しは愛されている、わたしの気持ちと同じように、好きでいてくれている、なんて、なぜそう思ってしまったのだろう。
相手は宇髄天元様だ。手の届かないことなんてわかっていたのに。