満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第25章 前世から※【宇髄天元】
本格的な夏の近づく気配がする。汗ばんだ首筋にうんざりして、節約のため我慢していたが、今日はもう無理だ。エアコンのリモコンを操作して冷房をつけた。
ふ、と息をつく。まだ大学の課題は終わらずに手こずるし、前期のテストも近い。
最近は、大学の自習室を閉館まで使用して、帰宅してからも軽くご飯を食べて試験の勉強やら課題やらをしている次第で、睡眠時間はあまりない。
波奈は特待生として大学に入学しているので、試験上位でないと特待生免除になってしまう。国立とはいえ理系の薬学部で、それなりのお金は必要で、特待生を外れるわけにはいかず、プレッシャーを感じていた。
ピコン、とスマートフォンが鳴る。ちらりと見ると、メッセージが表示されていた。
『今日も遅くなる。先に休んでて』
メッセージに既読をつけて、okのスタンプを送信した。
少し悩んで、
『お疲れ様です。無理しないでね』
と送信した。
一緒に暮らしてみてわかったことは、宇髄さんは兎に角忙しい。
非常勤ではあるが美術教師としての授業準備やテスト作成、美大志望の生徒のサポートや添削。
それに加えて、自身の絵の個展の準備で、最近はめっきり作業部屋に篭ったり、個展の打ち合わせなどで出かけることも最近多い。
少し寂しい気持ちもするが、波奈自身も大学の授業も本格的に、内容も難しくなってきたので、顔を合わせてゆっくり…なんて休日は、最後はいつだったか…。
それに、夜が遅くなるときが増えて、波奈が先に休むことが多く、気づけば朝に宇髄さんが横で眠っている…ということが増えた。ということは、身体を重ね合う回数は、無論減ってしまっていた。
一緒に暮らして4ヶ月が経とうとしているのに、まだ最後まで恋人のステップを駆け上がっていないことに、自分だけが焦っているようだった。