満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第19章 宇髄先生とわたし –記憶と悲恋ー中編
そう言って先生は長いため息をついた。
あ、やばい。すごく困らせている。
大好きな人を、困らせてしまった。
波奈は言ってしまった後悔が身体中に湧き上がるが、
一度出た言葉は、もう戻れない。
過去には決して戻れない。
「…沢田、」
と宇髄先生がようやくわたしの苗字を読んだと思ったら、
ガラっと美術準備室のドアが開けられた。
「テンちゃん!聞いて!」
と何やら興奮状態の女生徒が飛び込んできた。
驚いてビクリと身体が震えた。
「〜〜〜っノックしろよお前は〜」
と宇髄先生がその女生徒に呆れながら言った。
それからわたしのことをふいに見て、
「話が終わったんならもう帰れ」
と言い放った。
え、でも、と言いかけたけど、
先生はもうその女生徒と何やら受験のことを話し始めた。
波奈が美術準備室にいることは、もう忘れ去られているかのようだった。
失礼しました、と静かに言いながらお辞儀して、もう一度宇髄先生を見るけど、先生はもう背中を向けていた。
波奈は震える心をなんとか保ちながら、美術準備室の部屋を後にした。