満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第19章 宇髄先生とわたし –記憶と悲恋ー中編
「お前も疲れたろ、なんか飲む?」
コーヒーを差し出す私に、宇髄先生は問う。
あ、いえ、私は、と言おうとしたけど、宇髄先生は美術準備室の端にある冷蔵庫に向かって背を向けたので、口をつぐんだ。
宇髄先生と話したい気持ちもあったから。
「そのメイド服」
「え?!あ、」
カっと赤面した。この格好で1日いたせいか慣れてしまったこともあり、改めて指摘されたことによって思い出す。
猫耳メイドのこんなふざけた格好だ。
「かわいいな、ばかっぽくて」
かわいい、という単語に胸がどきっとなってしまったが、ばかっぽいと言われてすぐにトキメキが消え去る。
「…けなしてますよね」
「いや、ぜんぜん」
うそだ、とぷくっと頬を膨らました。
「ん」
と渡された紙コップを受け取るとき、ようやく宇髄先生の顔が見れた。ありがとうございます、と受け取ろうとしたけど、
先生の和服姿に身体が固まって動けなくなった。
「ーーー波奈?」
と頭の隅でわたしを呼ぶ声が聞こえた。
でもわたしは返事ができないくらい、身体が動かない。