満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第19章 宇髄先生とわたし –記憶と悲恋ー中編
「お、二組のメイドさんだ」
廊下にいる上級生2人組に声をかけられた。
ぺこっと挨拶する。
「やっぱ可愛い!今からどこ行くの?一緒にまわる?」
「えとあの、」
過ぎ去ろうとしたが上級生2人組に行く手を憚られた。
「めっちゃ良かったよメイド喫茶」
「あ、ありがとございます」と言いつつスススと逃げる。
「写真も撮ったし送ろうか?LINE教えてよ、写真送るね」
「あ。それは大丈夫です」と言いつつ目線を逸らしてスススと避ける。
「なんで逃げるの」ハハッと笑われて腕を掴まれた。
そこからブワっと鳥肌が立ち、固まってしまった。
と、ガラガラと勢いよく美術準備室の扉が開く。
そこにはスンとした顔の宇髄先生が立っている。
「おい3年、片付けは終わったのかよ、冨岡先生が探してたぞ」
静かな声が低く響く。宇髄先生の声。怒気を含んでいるのは、そこにいる全員がわかった。
そろりと腕を離されて、やべ、と小さく言い早々とそこを去る。
冨岡先生は3年生の担任だから、恐れているのかも、と波奈は思い、バタバタと急ぐ3年生を遠目で見送った。
「…沢田、入って」
「は、はい」
沢田。苗字で呼ばれた。ビク、として恐る恐る美術準備室に足を踏み入れる。騒がしい文化祭とはかけ離れた、シンと静かな美術準備室。沈黙がふと訪れる。が、それを打ち破ったのは宇髄先生だった。ハ、と短く息を呑む音が聞こえた。
「…言いつけ通りコーヒー持ってきてくれたんだな。サンキューね」
「あ、はい!豆から引いたので、美味しいと好評だったんですよ。先生はブラックですよね、温かいうちにどうぞ」一気に喋る。
「…うん」
波奈は先程の上級生に絡まれているところを見られて、波奈は後ろめたいような気持ちになっていて、そして宇髄先生はなぜか機嫌がよろしくないのを感じていて、それが怖くて、なかなか目線をあげられない。