満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第19章 宇髄先生とわたし –記憶と悲恋ー中編
10月。
キメツ学園の文化祭が近づいてきた。
放課後は文化祭の準備に追われて、生徒たちは自然と浮ついていた。
「うずせんたちは文化祭は何するのー?」
美術の授業中、友人は宇髄先生に話しかけた。
うずせん、とは宇髄先生の略でありあだ名である。
「ん?和喫茶」
「へぇー!浴衣とか着ちゃうの?」
「そ!派手だろー」
「楽しみ!絶対行くね!」
キメツ学園祭では、教師陣が模擬店を開くのが通年の慣わしであり、今年は和をモチーフにした喫茶店を開くとのことだった。
波奈は美術の課題の風景画を真剣に集中して仕上げていた。
美術は苦手だけど、上手くはなりたい。伸びしろは今のところない。
「で?お前らは何すんの?」
「メイド喫茶だよ!」
「ベタだな」
ハハッと宇髄先生は笑う。
「うずせんメイド好き?」
「まあ好きかな。派手だし」
「絶対来てね〜!わたしは裏方だけど、
男子の熱い希望で、ていうか満場一致で、クラスのマドンナ、波奈が店子するから!ね!波奈」
「ーーーん?えっ?あ、うんうん」
いきなり話を振られ、よく聞いてなかったけど返事をした。
絵画に集中していた。下手だけど。
「は?そうなの?」ぴく、と宇髄先生は反応する。
「しかも!メイド波奈と写真も撮れるコーナーも作るんだよー!インスタグラムのフレーム作って!優勝間違いなしでしょ?」
その友人の言葉を聞いて、文化祭のメイド喫茶の話をしているのかと気づいた。
「…へえ」宇髄先生は、なぜか静かになった。
クラスの出し物は、集客、話題性、創意工夫、など総合的に判断して順位を決める。なので、自然と力が入るのだ。
波奈はクラスで店子と写真係に選ばれた。
頼まれたら断れない性格で了承したが、正直少し人見知りの波奈は不安ではあった。
「よし!メイド波奈!当日俺のとこへコーヒー差し入れしろ!美術担当として!」
「え、やですよ!」
メイド姿を見られるのは恥ずかしいからこれはお断りだ。
すぐに断る。
「なんでよ」
「それ、は…ですね」
「はい決定〜拒否権なし〜」
「うずせん、職権濫用!」
あははっと友人が笑う。
波奈は顔を赤くして、ぜったいいやですよ!と抵抗したが、宇髄先生は聞く耳を持たず、授業は終了した。