満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第18章 宇髄先生とわたし -出会と恋慕- 前編
「お前、まだやってたの?!」
後ろから声をかけられてビクッと身体を震わせた。
「宇髄先生、おかえりなさい」
「何時だと思ってんだばか」
「え?、…ええと、」
チラッと時計を見ると時刻は18時半を回っている。
窓を見ると真っ暗で、激しくザーザーと雨が降っていた。
波奈は掃除に集中しすぎて時間を忘れたみたいだ。
筆やパレットを洗って、絵の具をぜんぶ色別に並べたり、掃除ついでに床も磨いてしまっていた。それはもう夢中で。
「す、すいません…夢中になっちゃって」
「ずいぶんまあ綺麗に…」
宇髄先生は感嘆な声を上げた。
「えへ、へ…。帰りますね」
褒められたことを少し嬉しく思い照れてしまった。
慌てて鞄を持って、帰ろうとすると、
宇髄先生は波奈の腕をがしんと掴んだ。
「先生?」
「雨も激しいし送るわ」
「えぇ?!い、いいですよ、そんな」
あわあわとその腕の手の力に焦って、答える。
「いや、もう日も暮れてるし、俺のせいで遅くなっちまったし」
「それは、先生のせいではなくてわたしが、」
「んっと変わんないね、そうやって夢中で集中するの」
宇髄先生はじっと波奈を見据えた。赤い目の奥は、なぜか熱を含んでいて、波奈はその目にしばし囚われたように固まった。
「あの、宇髄先生…変わらない、って、どういう…」
ずっと感じていた宇髄先生の言葉の違和感を口に出してみるが、
ピカッと部屋が閃光に包まれた。
「きゃああ!!」
ゴロゴロ…ドーーン!!という地響きのような雷の音に、波奈は驚いて、慌てて目を瞑る。
気づけば宇髄先生の胸に手を回して、しがみついてしまっていた。
雷の怖さで、咄嗟にとった行動だった。
逞しい宇髄先生の胸の温かさが、ほっぺたあたりに広がる。
「すっ…!」
すいません!と言い、慌てて背中に回していた腕を離した。
じわっと顔が赤くなる。
慌てて身体を離すが、再びぽすんと波奈は宇髄先生の胸元へ戻された。
宇髄先生の胸が、波奈の左耳とほっぺに押しつけられる。
波奈の背中には、宇髄先生の大きな手が回された。
「うず、…っ」
慌てて声を上げた。腕の中の波奈は、もぞっと暴れる。が、ぎゅっと抱きしめられた身体は、あまり動かない。