満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第18章 宇髄先生とわたし -出会と恋慕- 前編
「失礼します…宇髄先生?」
ドキドキしながら5階の美術準備室のドアを叩く。
中からおー、と声がして、ガチャリとその扉をあけた。
目の前に大きなキャンパス、そこからひょこっと宇髄先生が顔を出す。
「画材片付けておきました」
「ごくろーさん、そこ置いといて」
波奈は言われた通り、そこに立てかけた。
壁にはたくさんの絵が立てられている。
よくわからない絵が多い。抽象画、って言うんだっけ。
「ん?どれか気になる?」
「あ、いえ、芸術のことはよくわからない…けど」
波奈の絵の視線に宇髄先生が気づいて声をかける。
「けど?」
「どれも素敵で綺麗です」
「そりゃどーも」
「え?!これ、宇髄先生が描いたんですか?」
「まーね、すげーだろ俺」
ふふんと得意げに笑う、子どもみたいな先生である。
「この絵は?」
目の前の大きなキャンパス、ぐるんと回って、先生の視線の先へ歩みよる。
「見ていいですか?」
「いーよ」
「わっ…これ花火ですか?」
キャンパスの中は、キラキラと花火が咲いている。
一面に。
「うんそー」
「これは具象画ですね?」
「そ」
「こういうのも描くんですね」
「たまにね」
「きれい…」
じっ…と2人でキャンパスのなかの花火を眺める。
と、波奈は、その花火を、宇髄先生と並んで見つめていると
何とも不思議な気持ちになってきた。
前に一緒にこの花火を見たような、すごく懐かしい、
その花火の美しさを、宇髄先生と存分に共有したいような…
チラッと宇髄先生のほうに視線を流すと、
宇髄先生はもうキャンパスの花火ではなく、波奈の目を捉えている。