満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第18章 宇髄先生とわたし -出会と恋慕- 前編
「お前はここに座る、新入生代表挨拶呼ばれる、お前返事、壇上上がる、礼する、挨拶する、礼する、席戻る、オッケー?」
広々とした体育館に入り、それはそれは簡単端的に説明される。
そしてもうわたしのことはお前である。
「えええっ…説明早くないですか?終わりですかそれで」
一気に不安が襲う。この見た目の教師に。
「終わりだよ、簡単だろ?」
「そ、そうですが…」
「緊張する?」
「ぅ、あ、はい…」
恥ずかし気に頷く。朝から緊張しっぱなしだった。
前々から練習こそしたものの、何回も書き直し修正を重ねた。
練習を重ねるうちにこれでいいのか更に悩んで、書き直し修正するを繰り返す。負のループというやつだ。
大勢の前で、挨拶なんて、やっぱりなんとしてでも断れば良かったと。
でももう遅い、そんなこと嘆いたって、宇髄先生には関係がない。
やるしかないのだ。
でも。
「心臓バクバク言ってる」
「き、きこえますか?」
うん、と波奈をじっと見て宇髄先生は言った。
「お前なら大丈夫だよ」
口角をニッと上げて笑う。
初めて会って5分ぐらいの宇髄先生に、お前なら、と言われた。
何の根拠がと言いたくなる。
「…でも、」
「…あーーそうね、人は全員野菜と思え!」
「よく言うやつですねそれ」
「かぼちゃ、にんじん、なす、…」宇髄先生が言う。
「はくさい、きゃべつ、ほうれん草…」波奈が言う。
「小松菜、ブロッコリー、レタス…」
「ピーマン、れんこん、だいこん…」
「かぶ、たまねぎ、にんじん…」
「にんじんはさっき言いましたよ」
「あ?!そうか?!つかなんだこのゲームは」
フハッと2人で笑ってしまった。
おかしい、楽しい、緊張が少しほぐれる。
「人のことは野菜でいーけど、俺のことは野菜にすんなよ」
「え、どうしてですか?」
「うん?お前にとっては、俺は俺でいーの」
そう言って宇髄先生は楽しそうに笑う。
波奈は宇髄先生の言ってる意味が全くわからず考えていると、
ざわざわと声が聞こえてきた。
もうすぐ式の始まる時間がせまっていることを知る。
「うし、お前は2組だったな!向こうで列に並べよー」
背中をそっと押されて、
宇髄先生も体育館を後にした。