満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第17章 おかおをみせて※《宇髄天元》
「宇髄さんっ…わたし今忙しいんですよ!」
波奈の手首を掴み、ぐいぐいと宇髄は波奈を連れ出す。全く身勝手な恋人である。
「今夜から任務だ。愛しい人の行ってらっしゃいを聞きにきちゃわりーかよ?」
宇髄はまた揶揄うように波奈に言う。
端正な宇髄の左目に花のような化粧を施した顔は、額当ての宝石に負けず劣らず綺麗である。隊服姿の宇髄は、快活で一際その姿が目立つ。久しぶりに見た隊服姿の宇髄さん…
夜のしっとりとした、色気あふれる宇髄とはまた違い、そのギャップにも波奈はドギマギしてしまった。
「さみしーな波奈?」
「それは…、はい、寂しいです…」
だって三日三晩も夜通し抱かれておいて、今日は1人の夜だ、考えただけでも寂しい。考えないようにしていたのに。
宇髄はフっと笑って波奈を胸に抱き寄せ、そのまま口付け。
優しくそっと触れるような。深く口付けをしてしまえば、それ以上のことをしたくなってしまうことは、お互い周知の上だ。
「…行ってらっしゃいませ。お気をつけて」
名残惜しく離れた唇、気恥ずかしくて波奈は宇髄の顔をまともに見れず、うつむいたまま暫しの別れの挨拶をした。
何度となく任務の見送りをしてきたが、どうしてもこれだけは慣れない。波奈は鬼殺隊の医療班として、鬼殺隊の一員だという自負はそれなりにあるが、送り出すのはいつだって自分だ。
焦燥感にも似た、不安な気持ちが胸をつく。送り出してしまったら、もう無事を祈ることしかできないのだから。
「…ん、帰ってきたらまた失神させてやるよ」
宇髄はそんな波奈の不安を感じ取ったのか、またわしゃわしゃと頭を撫でて、そんな半分本気の冗談を言う。
「えっ!」
カっと赤くなってあわあわと動揺すると、宇髄はそんな波奈を見てハハ!と楽しそうに笑った。
「…し、失神はやめてください…」
とは言ったものの、宇髄は聞こえないフリをして笑い、じゃーなと言いながらひらひらと手を振り、蝶屋敷を後にした。