満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第2章 傷を癒す※《煉獄杏寿郎》
朝ごはんが済めば片付け。
千寿郎は学問を習いに出かけ、槇寿郎は最近はもっぱらよそへ稽古をつけていた。元炎柱である槇寿郎は、そとから稽古をつけてほしいと頼まれることがよくあり、ずっと断っていたのだが最近それを受けるようになった。波奈も杏寿郎もそれがとても嬉しかった。
2人を送り出した後、朝ご飯の片付けをしているときだった。
「いたたた…」
起きた時から感じていた少しの違和感が、1人で作業をしだすと形になってきた。
腰と、太もも周辺がとても痛いのだ。
筋肉が張るような、動くと益々その痛みがこたえてくる。
原因はもしかして、いや、きっと、
昨夜の情事のせいーーー
体制がいつもと違ったからなのか、激しかったからなのか…
波奈は腰をさすりながら、片付けをこなした。
「波奈!どうした、腰が痛いのか?」
「ぅわ!」
後ろから杏寿郎の両手が波奈の肩をぽんと叩いた。杏寿郎は声が大きく、いつも波奈はびっくりしてしまうのだ。
「杏寿郎さん!あれ?お仕事ですか?」
振り向くと、羽織りはまだ羽織っていないが隊服姿の杏寿郎が立っていた。
「うむ!昨日の報告で少しばかり留守にする!」
「そうですか。お気をつけて」
「波奈、昨日は無理をさせてすまなかった。夫として不甲斐ない。身体は辛くないか?」
「…!い、いいい、いえ!無理なんて…!」
杏寿郎のまっすぐとした目で見つめられながら、昨日の情事のことを言われるのは、昨日のことを思い出してしまい、ボボっと赤くなりながら応えた。
「ここ、さすっていたが…?」
杏寿郎の大きな手が、波奈の腰をスっと撫でる。
びくっと、それだけで反応してしまった。
「ん…っ!だ、大丈夫です。すこし痛いだけで…!」
「痛いのか?!腰か?!」
「た、たいしたことないです!ほんとうに!お気になさらず!」
波奈は今にも腰を見せろと言い出しそうで、波奈の帯に手をかけた杏寿郎を、両手で押し返した。
「む。君は案外頑固だな」
「杏寿郎さんほどではないです」
「…まったく。…昨日はあんなに従順だったのに」
「なっ…!」
「ハハハ!では行ってくる!」
杏寿郎はニコニコ笑いながら煉獄家を後にした。1人ぽつりと残された波奈は、赤くなった顔をフーと手で仰いだ。