満月の夜に【鬼滅の刃 煉獄杏寿郎 宇髄天元 R18】
第10章 ふたりの朝日※《宇髄天元》
「お前こんなに食べれるやつだっけ?」
4個目のケーキに手をつけようとしている波奈に、ふと宇髄は問う。
「蜜璃さんと甘味処に最近行くようになって、胃がおっきくなったようです」
へへっと照れるように笑う。
あー、甘露寺ねーとつぶやいた。
あーこれも美味しい!とにこにこしてる波奈をみつめた。
「綺麗綺麗!宇髄さん」
「見てる見てる」
蝋燭に灯された提灯たちが、色付いた葉をいっそう綺麗に魅せてくれる。波奈は大興奮でその景色を楽しんでいる。
「楽しいか?」
「派手に楽しいです♫
こんなの久しぶりです!
そして遠出で一泊なんて初めて!」
ふーん、よかったねと宇髄もつられてにこっとした。
波奈は幼い頃に、波奈以外の家族もろとも鬼にやられている。
波奈は声を押し殺して逃げ込んだところは、庭の草陰で、たまたまちょうど藤の花が咲いていたらしく鬼には食べられなかったらしい。
代々医者の名家で、血気術や鬼との対峙に傷ついた隊士のケアなどを行っていたらしく、産屋敷家からの交流もあったらしい。
良いところのお嬢さんであったのに、家族が生きていれば、こういうふうに家族旅行をしていたはずだ。それが一夜で家族を失った。
…辛い過去を抱えている。
「波奈、これからも派手にいろんなところ行こうな!」
「はい!宇髄さん!」
パアっと明るい笑顔。
それからギュッと宇髄に抱きつく。
「んあ?!波奈?」
突然の波奈の抱擁に、宇髄は珍しくびっくりした。
「…宇髄さん今日はありがとう。
楽しすぎていっぱいはしゃいじゃいました…」
波奈は宇髄の胸に顔を押し当てて、そんなことを言った。
「……いきなりはずるいわ…」
宇髄はハーとため息をつき、赤くなった顔を隠すように手で抑えた。
「…宇髄さん?」
俺を抱きしめながら、
上目遣いで見上げてくる。
いや、これはもう誘っている。
宇髄は見上げてくる波奈に、ちうっと口付けをすると、
波奈は驚き顔を赤くさせた。
「…ここ、外ですよ」
「誰も見てねーよ」
…そんなに拒否はしていない。
宇髄はもう一度、波奈に深く口付けをした。