第1章 出会いの日
「モゴモゴ…、んぐっ。じゃあ次の遠征はしばらく先になりそうだな」
「そうだな。サボはしばらく休みがなかったからな、今のうちに体を休めておくといい」
「そうそう、溜めてた書類とかも整理しておいてね〜」
コアラさん達はそのまま食器を返して食堂から出て行ってしまった。
いつの間にか周りも静かになっていて、さっきまでたくさんの人で賑わっていたのに今では離れた席でチラホラと数人の人がいるだけになっていた。
1人になったサボさんは食べるスピードの拍車がかかる。
山盛りにされていた食べ物達はあっという間になくなってしまった。
喉詰まらせないのかな。
気にはなるけれども、今話しかけないほうがいいいんだろうな。
「ずっと俺を見ていて暇じゃないか?」
「え、あの…」
確かに今ずっとサボさんを見ていたかもだけれども、そんなにわかりやすかったかな。そもそも本人に気づかれるまで見ていたなんて、私ってば何やってるんだろ。
ちょっとした自己嫌悪と、羞恥心で汗が出てきたように感じた。
上がった気がする体温を少しでも覚ますためにパタパタと仰いでみる。
「なんでバレたんだろって思っただろ」
「う…、はい…」
いたずらっ子の笑顔でしてやったりとした顔でこちらを見ている。
「で、俺の何がそんなに面白かったんだ?」
いつの間にか食べ終わっていたみたいで、食器をまとめて席を立つ。
その後ろをフヨフヨと浮いてついていく。
「いえ、ただすごいたくさん食べるなって思っていただけなんです。たくさんお皿に盛られていたものがあっという間になくなってしまったので」
単純に驚いてしまったのと、少しの嫉妬。
今の私にはそんなに美味しく食べるということすらできないから。
だからちょっと羨ましかった、ワイワイと会話をしながら食事をすることができるのが。
サボさんについてくまま、廊下に出て人通りが少ない通路まで来た。
そこでサボさんは歩みを止めってしまった。
視線を少し下げていたので、危うくぶつかるところだった。
幽霊だからぶつかるということもないのだけれども…。
振り返ってサボさんはジッと私の顔を見てくる。何も言わずじっと見られているこちらからしたら、たまったもんじゃない。