第1章 出会いの日
サボさんが出かけてしまってからは、ちょこちょこ一人で部屋から出ていた。
よく行っていた食堂はもちろん、訓練場や外に出て風に当たってみたりと、今まで行っていなかった範囲まで行動したので少しばかり地図が頭に入ってきた。
たまたま食堂にいた人たちの輪に入ってみても、あまり楽しくないし、外に干してある洗濯物の間を潜って遊んでいると、風もないのに洗濯物が動いてる!と怖がられてしまった。
ちょっと申し訳ないとか思ったり、思わなかったり。
探索を進めていくと、どんどん奥の方まで来てしまった。
少し暗がりの廊下に、目の前には他の部屋よりも古びたドア。
違う雰囲気に釣られて入ってみると、そこは図書室のようだった。
たくさんの資料が山積みになっているところを見ると、資料室も兼ねているのかしら?
「それにしても、本がたくさん。どれも難しそうなものばっかりだけど…」
幽霊でも本が読めたらよかったのに。
そうしたら、少しは退屈しなくていいし、帰りを待っている間の寂しさが少しは薄れるかもしれないし。
何か知ってる本がないか、探し回っているといきなりドアが開いた。
廊下を歩いてくる音がなかったから、思わずビクッとしてしまった。
悪いことをしてるわけではないけれども、本棚の隙間からそろっと覗いてみる。
入ってきたのは顔に模様が入った男の人。
なんだか他の人とは雰囲気が全然違っている。
その男の人は何かを探しているのか、辺りを見回している。
何か探しているのかな?
「誰かそこにいるのか?」
響いた声。
サボさんよりも低く重圧のある声が私の体に響いた。
目線だけ動かして、周りを確認している。
目が合ったわけでもないのに、体がガクガクと震えている。
体は縛り付けられたように動かない。
「誰かいたような気がしたが、気のせいか」
しばらくして、男の人は出ていった。
震えていた体が息を吹き返す。
力が入らなくなって、その場に座り込んでしまった。
「ふぅ、ふぅ…」
冷や汗をかくわけがないのに、体が冷たくなっている気がする。
しばらく立ち上がれる気配がなくて、そのまま膝を抱えて座り込む。
どのくらい経ったのかわからないけれど、少しは落ち着いた。
今日はもう大人しく部屋にいよう。