第5章 悪い癖。
ひゃあぁぁぁぁ~…!!
「おで…おで…こ…に…。」
パニックなんて通り越して、
まともにしゃべる事も出来ない私に、
「ん?あぁ…凛が、えらい可愛い
反応するから、つい…な。」
かわいいって!!
かわいいって、二回も言った!!
私の事、かわいいって!!
この際、可愛いの後に続いている
『反応』は無視でいいよね。
「可愛いなぁ…思たら、ついやってまうねんなぁ。
悪い癖や…。」
そんな事を言いながら、浩二君は笑ってる…
…ん?
『つい』やってまう?悪い癖?
誰にでも『つい』やってまう…って事?
「そんな癖…聞いた事ないわ!!」
真っ赤な顔で、何とか絞り出せた憎まれ口。
浩二君は、そんな私の姿をニヤニヤと
見つめながら、すぐ横の机に浅くもたれ掛かって
私の腰に手を回して…引き寄せた。
私の体は、開かれた浩二君の脚の間に
すっぽりとおさまった。
「あぁ~。あかんわ~。このまま抱きしめたくなるって
も一つ悪い癖も出てきたわ。」
そんな事を言いながら、私を強く抱きしめた。
自分の心臓の音が大きくて…うるさい。
思考回路は完全に停止したみたいで、
何も考えられず…逆に自分が冷静なんじゃないかと
錯覚した。
静かな空間に私達しか居ない。
拒み方も逃げ方も分からず、
ただ…抱きしめられていた。