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夢繰り屋 凛 第七章 『前編』

第5章 悪い癖。


ひゃあぁぁぁぁ~…!!

「おで…おで…こ…に…。」

パニックなんて通り越して、
まともにしゃべる事も出来ない私に、

「ん?あぁ…凛が、えらい可愛い
 反応するから、つい…な。」

かわいいって!!
かわいいって、二回も言った!!
私の事、かわいいって!!

この際、可愛いの後に続いている
『反応』は無視でいいよね。

「可愛いなぁ…思たら、ついやってまうねんなぁ。
 悪い癖や…。」

そんな事を言いながら、浩二君は笑ってる…

…ん?
『つい』やってまう?悪い癖?
誰にでも『つい』やってまう…って事?

「そんな癖…聞いた事ないわ!!」

真っ赤な顔で、何とか絞り出せた憎まれ口。

浩二君は、そんな私の姿をニヤニヤと
見つめながら、すぐ横の机に浅くもたれ掛かって
私の腰に手を回して…引き寄せた。

私の体は、開かれた浩二君の脚の間に
すっぽりとおさまった。

「あぁ~。あかんわ~。このまま抱きしめたくなるって
 も一つ悪い癖も出てきたわ。」

そんな事を言いながら、私を強く抱きしめた。

自分の心臓の音が大きくて…うるさい。
思考回路は完全に停止したみたいで、
何も考えられず…逆に自分が冷静なんじゃないかと
錯覚した。

静かな空間に私達しか居ない。

拒み方も逃げ方も分からず、
ただ…抱きしめられていた。






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