第1章 散る光の下の熱※/ジン
『……見えちゃうじゃん』
「見せりゃいいだろ。虫除けなんだからよ」
ジンはそう言ってニヤリと笑う。
『っ……そ、そろそろ行こ!』
一気に真っ赤になったであろう顔を扇ぎながらジンの手を引いた。でも、逆に引っ張り返されて壁に押し付けられてキスされた。
「今日泊まるんだよな?」
『そのつもりだけど……』
「……帰ってきたら抱くからな」
『うっ……うん』
「それとも今からするか?」
『バカっ……でも、ちょっと待って……』
結局、家から出たのは30分後だった。花火大会が行われる神社が近くなっていくと同時に歩く人が増えていく。そして……
『ねえ、ジン。お好み焼き食べたい』
「……まだ食うのかよ」
屋台の食べ物ってどうしてこんなに美味しそうに見えるんだろう……四方から美味しそうな匂いが漂ってくる。実際、作り立てのアツアツは格別だし。
『いいじゃん。りんご飴も食べたい……あ、ソフトクリームも』
「太るぞ」
『……前に太れって言ったじゃん』
「んなこと言ってねえよ」
『言った!軽すぎるから太れって』
「……体重増やせとは言った。太れとは言ってねえ」
『何が違うのかわかんないんだけど』
「……自分で考えろ」
ちょっとモヤモヤしたけど、りんご飴とお好み焼き、ソフトクリームとクレープを食べた。お昼ご飯少なくして良かった。
『あと10分で花火始まるって!』
賑わっていた屋台の前の人の波が緩くなる。多くの人が花火を見るために移動したんだろう。逆にこのタイミングで屋台を回る人もいるんだろうけど。
ジンの袖を引っ張るけど、動こうとしない。
『ねえ行こ?』
「……こっちこい」
ジンは人集りとは反対側へ歩いていく。
『ちょっと、どこ行くの!?』
「いいからついてこい」
もうすぐ始まっちゃう……なんてスマホで時間を見ながらすごく不安になる。家の方向とも違うし、面倒だから帰るってわけでもないと思うんだけど……。
神社の近くの林を抜けていくにつれて、灯りの数が減っていく。薄暗いからなんか怖くてジンの浴衣の袖を掴んだ。
すると急に視界が開けた。と、同時に目の前で大きな花火が上がる。
『わぁ〜!』
「……穴場らしいが、割といるもんだな」
周りを見るとカップルが私たちのほかに3組。ていうか……
『穴場って?』