第1章 Mistake
竜胆と呼ばれた男が振り向き、目が合った
「ぁっ…」
私は軽く会釈した
派手な髪色に、顔立ちはなんとなく蘭さんと似ていて雰囲気も…この2人は兄弟なんだな…
それにしても品定めするような視線には居心地が悪い
「…ふーん、良んじゃね?」
そっけない言葉を放つとエンジンがかかり、地下駐車場から出た
夜明け前の少し明るくなりかけた空
こんな時間になるまでホテルにいたんだ…
蘭さんは誰かに電話をしていた
さっきまで居た部屋番号を伝えると、後はよろしくーなんて言って電話を切った
振り向いた蘭さんはにこっと笑って私にお疲れ様と一言告げると気分良さそうに鼻歌を歌っていた
「兄ちゃんはいつもイイとこ取りだなー」
「ごめんなー今度竜胆も交ぜてやっから」
2人の会話を聞き流しなら、不安が胸に押し寄せる
どこに行くか聞きたいけど聞けない、私がさっき人を殺したようにこの2人だって同様に同じ事をしている組織の一員だ
それも多くの人を殺めている
芸能界にいれば嫌でも色んな情報が入ってくる
私も同じ目に遭うかもしれない…
不安を胸に車は夜明け前の首都高を走っていた。
〜Mistake〜 完