第1章 Mistake
動悸が止まらない、震える身体を抱きしめながら恐る恐る顔を上げていく
背後から聞こえる知らない男の声とムスクの香り
「しっかし派手にやったなー!女の割に度胸あんじゃん」
あまりにも私を置いてきぼりにするように話すから気になって、
意を決して声の主の方へ振り向いた、もう怖いとか不安とか色んな感情が混じって目尻から涙が溢れてきた。
背の高い男、派手な色のスーツを着て髪型をピシっと決めて、手には私の大好きなPRADAの紙袋を下げて…愉快そうに私を見下ろす、、、俳優?こんなにも顔が整った俳優は私でも知らない。
「ンな顔しなくて良いからな?俺がちゃーんと処理してやっから♡」
私と同じ目線になるようにしゃがむと、ぽんっと大きな掌が頭に下りてきて、クシャクシャと触られた。
「ぇ…」
男(俳優?)は私の目尻に唇を寄せるとキスをして、続いてヌルっとしたものを感じた
なんで…涙を舐めた…?
てか、処理って?何?どーゆー事…
私が放心状態になっているとPRADAの紙袋を広げる。
「上手にできたからプレゼント、好きでしょ?早く着替えておいでっ」
何を上手にできたというんだ。
私は虚な手で紙袋を受け取った。
「あ…ありがとう…ございます…」
ありがとうって言うのはPRADAの事で上手にできたと何を褒められたかわからない事に対してではない、大好きなPRADAが私の今の惨状を紛らせた。
「あ!その汚ねぇ返り血流してきたら?ってバスルームで殺ったんかよー」
しゃーねーなーと言いながら男は立ち上がりバスルームからさっき私が殺した残骸を引き摺り出していた
私はバスルームに広がる血痕をシャワーで洗い流し証拠隠滅を謀っていく
なんで私こんな冷静なんだろう、
共犯者?になろうとしている知らない男がいてこんなに冷静な自分の頭がおかしい。
逆に共犯者ができた事の安堵感だろうか。
全てを洗い流すと私は服を脱ぎシャワーを浴びていた。
背後から寒気がする…
「エッ…」
「お湯溜めといてー後で使うからさ」
男は扉から顔を出すとそう言って行ってしまう…
一瞬の事で驚き、裸を見られた羞恥心も無く私は言われたようにコックを捻りお湯を溜めていく。
血痕を流し終えると備え付けのメイク落としで顔を撫でていた
それだけで全てを終えた解放感が私を満たしていく