第2章 Welcome to a new world
「おい」
その声が聞こえた、聞いた事も無い声、見たこともない彼が。
私を囲んでいた男子を次々と蹴り飛ばしていった。
大丈夫か?
それはもう、忘れられない笑顔で、私を助けてくれた。
特攻服を着た金髪の小柄な彼は私の住むマンションまで送り届けると、
深夜に一人でほっつき歩くなよ、と一言だけ告げて行ってしまった。
人は見かけによらないんだな、東京に来て初めて感じた他人の優しさに
私はまた彼に会いたくて翌日も同じ時間にコンビニへ向かった。
この日はたくさんお菓子を買って、会えたらお礼に渡そうと思って。
翌日もまた彼と会えた、一人で歩くなと言う彼はバイクの背後に私を乗せて、マンションに送り届けた。
もっと彼と話してみたい。彼の事を知りたいし私の事もたくさん知って欲しい。
私は彼をマンションに迎え入れると色んな話をした。
それはもう驚く事ばかりで、私より年下だった事。暴走族の総長だった事。
何より私は青年誌の表紙を飾っているのに彼は私の事を知らなかった。
これ、私だよ、って今まで飾った沢山の紙面を見せると
スゲーな!って芸能人だったんだ!と言った。
私の今の立場は異性の性処理の道具にされるだけのグラビアアイドルなのにそんな私を芸能人と言ってくれた事が嬉しくて、
彼に惹かれていくのを感じていた。
それからはお忍びでバイクで色んな所に連れて行って貰ったり、夏は私のマンションから花火を見たり、秋になる頃には初めてのキスをした。
そんなある日
「ちゃんさーそろそろ次のステップに向けて、やる事やらないとね」
私は新しい仕事を獲得するのにとてつもなく苦労していた、ドラマのオーディションに連続で落ち続けたのだ。
このままでは脱ぐだけしか取り柄のない、搾取され続ける存在として消費されてしまう。
遂には事務所から大物プロデューサーと寝るように指示されてしまった。
この頃、私は処女でマイキーとは恋人同士同然に寄り添っていても実際には付き合っていなかった。
芸能界に駆け出したばかりの私の負担にならないよう、
マイキーは常に私を気遣ってくれていた。
お互いの友人にも会った事は無く、デートは人気の無い深夜にバイクを走らせたり、会う時は私の家が殆どで。
私は初恋の人に初めてを貰って欲しかった。
その夜、私はマイキーを誘った。
