第2章 Welcome to a new world
メイクさんは慣れた手付きで髪をセットしていく…のが当たり前だが、急に手を止め焦った顔をしていた
この瞬間、私も気付いてしまった…
「あっ」
鏡越しに蘭さんと目が合うと、口元を片手で覆い肩を震わせていた
めちゃくちゃ笑ってる…いや、こっちは笑い事じゃないんだけど。
今日は巻き下ろしにしますね!!最近アップスタイルが多かったですし!なんて早口で告げるメイクさん…
私はすみません、と心の中で謝っていた…
首までしっかりとリキッドファンデを塗られると罪悪感と羞恥心でおかしくなりそうだった。
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「OKでーす!お疲れ様でしたー!」
終了の合図が出された。
一息付きたい所だが、そんな訳にもいかない。
撮影自体はスムーズに進んだ、蘭さんは俗に言うイケメンだ。
補助の若い女性スタッフから至れり尽せりな対応をされ(マネージャーなのに)ずっとご機嫌で私の撮影を眺めていた
話かけてくる可愛い女性スタッフには謎の名刺を配り連絡先交換までしてたし何を考えているのか。
私がその様子をチラッと見るたびにニヤっと笑っていた。
スタジオを蘭さんと後にする頃には夕方になっていた、迎えに来た竜胆さんは後部座席の扉を開けて私をエスコートすると蘭さんも何故か後部座席に乗り込んでくる
竜胆さんは小さく、は?と呟いた
「あーーー疲れたぁ〜ブスの相手マジ疲れるわぁ」
な?って言いながらニコッと笑い私の肩に腕を掛ける蘭さん
重いんですけど…
「私からしたら楽しそうに見え「もしかしてヤキモチ?」
「え…そーゆー意味じゃなくて」
「自信持てよ、また抱いてやるからさ」
そーゆー意味じゃないし、なぜこんな事になっているのか全部ちゃんと説明が欲しいのにまた抱いてやると言う言葉に胸がキュッと締め付けられる
もうこんな事にドキドキする歳じゃないのに
大人になってからまともな恋愛をしてこなかった私には…
刺さる言葉だった。
「てか兄ちゃんどこまで話したの?このまま事務所行って会わせる予定だけど」
「どこまで話したか覚えてねーし、とりあえず俺のモンなって感じー」
事務所って…今から行く事務所は私の所属事務所じゃないなこれ、絶対そうだ…梵天の事務所だ…
私、殺されるかもしれない…
そう思うと急に動悸が激しくなり指先が震えた
