第26章 勧誘は彼女の笑顔と共に
1つ困ったことをあげるなら、寝る場所だ。
ユキが遠慮してなかなかベットに入ろうとせず、終いには一緒に寝ようと言ってきたものだから、少しユウを恨んだ
。きっとこれまでユウはユキに対して何も教えてこなかったのだろう。普通は大人になるにつれて理解していくものだが、何せあいつは奴隷だった。
きっと、色恋など一度も経験したことがないのだろう。ユウもそれをわかっていて、いや、天竜人に捕まり想いを伝えられなかったのかもしれないが、こういう常識くらい知っていて欲しかったとエースはうなだれた。
そんなエースを不思議に思いながらも、毛布を上げぽんぽんと自身の隣を叩くユキに、エースは無言で近づいた。
これで解決っとばかりに満足げな表情をするユキの体のそばに両手を付き、その顔を至近距離で覗き込んだ。
突然のことに・・・え、と声を漏らすユキは、そこで初めてエースのいつもは優しいその双眸が危険な色を示していることに気づいた。
「女が男を同じベットに誘うってことは・・・そういう覚悟があるってことで、いいのか?」
そう言うとボンッと真っ赤に染まるその顔を見て、なんだ、別に知らねぇわけじゃねぇのか、と思い安堵するエース。しかし知っていて尚無自覚ってのは、さらに悪ぃなとグイッと近づくエース。まだ赤く染まるユキは近づくエースに距離を取ろうと腰を引く。だが、もともと座っていたため、その体は簡単にベットに沈んだ。
それを見下ろすエースは、熱っぽくユキの青い瞳を見つめた。
「・・・・女からの誘いに乗らねぇ男は、いねぇぞ」
「っ」
段々と近づいてくるエースに、ユキはギュッと瞼を閉じる。
が、くると思っていた場所に衝撃がこず、思ってもいなかった場所にちゅっと唇を落とされ、パッと目を開けるユキ。
「ったく、そこで目を瞑っちゃあ、合意になっちまうぞ。これに懲りたら、男をベットになんか誘うなよ。男なんか、その辺に転がしときゃあいい」
クシャりと頭をなでベットから降りていくエースを、真っ赤に染まった顔で、先程唇を落とされた額に手をあてて見るユキ。
しばらくそうしていたが、すぐに毛布を頭まで被り眠りについたのを確認し、エースもその辺りに転がる。