第52章 1番隊
マルコの問いかけに答えず、ホウと息を吐くユキは、目の前に広がったその景色に目を奪われているようだった。一体何を見ているのか、とその視線の先を追うと、マルコは少しだけ顔を顰めた。
せっかく気分転換にと思って空中散歩にでも連れ出してやろうと思ったのに、如何せん時間帯が悪かった。少し憂いたような声が上から降ってくる。
「・・・これじゃあ、ますます会いたくなっちゃう」
呟かれた言葉と、目の前に広がる真っ赤な夕日を前に、マルコはため息を吐きそうになるが、先程の部屋で見たあの何かを我慢するような表情をしたユキが溜め込むことなくその胸の内を吐露したことに対して少しの安堵が広がる。
「・・・マルコさん、私、新しいこと、発見しちゃいました」
そう言って寂しそうな顔をそのままに、ユキは切望している名を呼んだ。
「今まで、太陽だと思ってたんです。昼間に輝く、明るい太陽。だけど・・・夕方に真っ赤に燃え上がるような夕日も、彼に酷く似ている」
・・・・エース
風にかき消されるような小さな声で呟いたユキは、それっきりマルコのふわふわな背に顔を埋めてしまう。ぎゅっと握られた背から、ユキの思いが直接伝わってくる。
会えないことに寂しさを訴える不器用な妹に、マルコは心の中でため息を吐きもうしばらく飛んでやろうとその翼を羽ばたいた。