第26章 勧誘は彼女の笑顔と共に
この1週間一緒に過ごしたユキは、本来物静かで、のんびりとした時間を好む女だった。
あの熱にうなされていた時も、燃える街を見つめる時も、天竜人に復讐した時も、いつも何かを抱えて、いつも苦しそうであった
。弟を守るという強い意志を持っていた時は根性強く、必死に全てを守ろうとしていた。そんなユキが、吹っ切れたように自分の性格のままに生きていく姿に、エースは素直に感嘆した。
そして、エースは困ったなと苦笑した。天竜人に復讐した時のような激情も持ち合わせるあのユキの覚悟も気に入っていたが、弟の死を乗り越えるために前を向くこのユキも、それはもうとても気に入ってしまったのだ。
「エースっ!食べながら寝ないっ!!」
「エース!見て!これ、天ぷらにできるよ!今夜は山菜の天ぷらだねっ」
「えっそれ、熊・・・とってきたの?・・・・フフッエースは強いね!じゃあくまさん、命をいただきますっ」
「ちょ、エース!?なんで溺れてるのっ」
「・・・・エース。私は・・・ユウの分まで、幸せになる・・・・できるかな」
「エースは、優しいね」
「いつも、ありがとう」
この1週間、エースは仲間の船を待ちながらずっと考えていた。
いつも笑顔でエースと話すユキを、自分の乗り込む船に勧誘するか迷っていたのだ。
エースは正直、ユウとの約束もあるし、自身が思ったよりもユキを気に入ってしまっているため、ぜひともユキを白ひげの船に乗せたいと思っている。
だが・・・・それは全部エースやユウの勝手な願いで、ユキ本人の望んでいることではないかもしれない
。四皇の船に乗るには、それだけの覚悟も必要だ。それこそ、ようやく命を大切に生きようとしているのに、死の危険に晒してしまうことになるかもしれない。
エースは、もうそろそろ迎えがくることをなんとなく予兆していた。ユキとのこの無人島生活も、終わりに近づいてきている。
・・・・・聞いてみなきゃ、わからねぇよな。
そう思い、手の中にあるそれを見て、エースはユキを探す。