第24章 弟の決意
『フェッフェッフェッ!ようやく姉に会えるえ!よかったなあ姉のお荷物!』
そう言ってあの天竜人が視線を向けるのは、見る目もないほどにぐちゃぐちゃになった顔のままマストにくくりつけられた、弟『ユウ』の姿。
それを見たユキは悲鳴をあげ、雷に打たれたように目を大きく開く。
『ハッよく言う。俺と会わせる気もねぇくせに、このクズ野郎っ』
意識は残っているのか、殴り続けられたその顔で悪態を吐くユウに、パンッと銃声が響いた。
短く悲鳴をあげるユキの目を、エースはすぐに覆い隠した。こんなもの、見せるべきじゃない。やっぱり力尽くでも戻ればよかったと後悔の念が押し寄せる。
だが、ユキはその手を払い除け、怒りの篭った瞳で窓に身を乗り出した。
「・・・っ離してっユウを、助けなきゃっ」
エースは未だ繋がれる手を引き寄せ、その細い腰に腕を巻きつける。
「・・・・これが、ユウの、覚悟だ」
「!・・・何、言って」
バッとこちらを振り向くユキは、その言葉で、エースの表情で、全てを悟った。ユウがユキとの約束を果たすつもりなど、初めからなかったことに。それに気づき、これでもかと言うほどに暴れるユキ。が、それも全て押さえ込み、エースは早く窓を閉めろと言う。
「こんなの、おかしいっユウは、あの子は、ここで死ぬべきじゃないのっ!!」
目の前で腹部から血を垂れ流すユウに、ユキはどんどん顔色が悪くなっていく。