第23章 弟の本心
「・・・・ユキは、大事なやつのためならなんだってする。あの頃、俺がいたから、あいつは決して過去に触れようとはしなかった。
だけど俺のいなくなったお前らの時代じゃ、あいつは何をしでかすかわからない。ただでさえ、前科者になってんだ。これ以上は、きっと、ユキの命に関わる。」
未来が想像できたのか、蒼白になっていくユウの顔を見る。まるで死人のように青い顔で、火拳のエース、とつぶやいた。
「俺は、未来からきたユキの言葉に耳は貸さないと決めている」
「!?何でだ、お前、ユキと約束してたじゃねぇか」
「・・・もしここで俺が生きてたら、未来は、どうなる?ユキは・・・・どうなると思う?」
その言葉で、エースは雪が天竜人に弟を人質に取られ、身動きできない状況だったことを思い出す。あそこで本当に弟がいたのなら、エースが天竜人の乗る船を焼くことは、ユキに阻まれていただろう。
「・・・」
「・・・そうだ、ここで生きること、それはユキにとって最悪の未来だ。今までは他の奴隷と同じように扱われてきてたが、もうあいつも成人する。つまり、これまでよりも酷い環境に身を置くことになる」
「・・・・・お前が、今、逃げればいい」
「無理だ。ユキと連絡する手段もない中、俺がいると騙されちゃ、ユキはそれを信じちまう。
・・・・それにな、ユキも言ってただろ?
『過去は変えられない』・・・変えちゃ、いけねぇんだ。
今回、俺がユキの能力をたまたま知っていたから状況が把握できたんだ。もしここで変えちまったら、ユキはまた、タブーを犯したことになり、寿命を取られるかもしれねぇ。それだけは、絶対にあっちゃいけねぇ」