第3章 消えた女
「おい、エース、まーだ悩んでんのかぃ?」
食堂でいつもなら進みすぎるはずの食事を、珍しくも一口しか口のついていない状況でぼんやりしていると、後ろから1番隊隊長、不死鳥マルコの声が聞こえてきた。
「・・・・・だってよー、おかしな女だったからよー。待ってろって言ったのに・・・」
「とか言って、めちゃくちゃ美人だったんじゃねぇのかよ!」
「だいたい、女なんか敵船に乗ってなかったぜ?」
「ま、それもぜーんぶ、エースの夢だったんじゃねぇの?」
さまざまな野次が飛び交う中、エースはつい先程の出来事を思い出した。
バンッッッ!!これでもないくらいに自室のドアを急いで開けるエース。
エースが去ってすぐに収拾した敵襲の後片付けに船内がバタバタと騒がしい。そんな中、まだ数分もたってないはずなのに、問い詰めてやろうと思っていた人物の姿はどこにも見れなかった。
部屋中を探したが、それらしきものは見当たらず、あちこちで作業していたクルーたちに聞いてみても皆知らないの一点張りで。
あまりにもエースがしつこく聞いて回ったので、すでに船内ではエースの話で持ちきりだ。
「にしても、本当に謎だ。なんだったんだあの女。・・。マルコ、本当に誰も船内に入ってきてねぇのか?」
マルコはずっと甲板にいたと言う。マルコほどの実力者が、女とはいえ敵をそう安易と船内に入れるはずがねぇ。
だいたい、あんな状況で誰とも会わずにエースの部屋まで来れるはずもない。もし本当に敵船の女だったとしても、廊下で誰かに姿を見られているはずだ。なのに誰からも目撃したと言う情報が入ってこない。
「・・・ああ、船内には誰も入っていないはずだ。そもそも、女なんてどこにもいなかったよい」
独特な語尾をつけながらも答えるマルコの言葉に嘘はない。