第15章 お尋ね者
「・・・・ムスラルド侯!!!!!1つ、お聞きしたいことが、あります。質問する許可を、ください」
頭をあげ、そう叫ぶ女に、役人たちは足を止める。
「・・・・なんだえ。おばえへの罰なら、色々考えているぞえ」
じっくりと舐め回すような目で女を見る天竜人。女は、意を決したように口を開いた。
「・・・・・・あの子、『ユウ』は、今、どこに」
「!」
『ユウ』。
エースが何度も聞いたその名前。しん、と天竜人の答えを待つ女から、嫌な緊張感を感じる。
「フェッフェッフェッフェッ!そんな当たり前なこと、聞いてどうするえ!おばえはわちしの元から逃げ出した。それが、答えだぞえ」
「・・・!!私は、逃げてなど、いません!!!連れ出されたのです!!!」
「一緒だえ。おばえがわちしの元にいる、その条約を破ったのは、おばえだえ」
「!元はと言えば、あなたが指示したことでしょう!!!!!」
「知らないえ。わちしは何もしてないえ。おばえが勝手に逃げて、あの奴隷は消えた。それだけの話だえ」
ふつふつと、その女から怒りが湧き出てくるのが、エースにも伝わってきた。
「この、外道っ」
ギリ、と食いしばったその唇から、血が流れる。
「おばえ、誰に口を聞いているのかわかっているのかえ?この、神に遣わされた天竜人であるぞえ!!」
「そんなもので、私の『弟』が殺される筋合いはない!!!!」
とうとう、その女は叫び立ち上がった。『弟』と口にした瞬間、エースは固まった。つまり、こいつがいつも口にしていた『ユウ』は、弟の名前だったのだ。