第15章 お尋ね者
そう言い後ろのエースに、小さな声で「死んだふりしててください!」と伝える。エースは、女がその天竜人の名を呼んだことにピクリと反応する。
「・・・・何か、言ってるのかえ、あいづは?わちしに対する深い謝罪かえ?」
近くにいた政府役人に聞く、『ムスラルド侯』と呼ばれる天竜人は、不快そうにその顔を歪ませる。
それを聞いた女は、その小さな体をこれまでかと言うほどに震えさせる。しかし、すぐにその体を丁寧に折り畳んだ。
「!・・・・・・あなたの元から、逃げてしまい、申し訳ありませんでした」
「っおい!何してんだ!」
目の前で額を砂浜へつける女に、エースは目を見開く。思わず起き上がりそうになったのを、「動かないで!」と言われ体を固める。
「・・そうだえ。おばえは、誰のものだと思っているえ」
「・・・・ムスラルド侯で、ございます」
顔を上げずそう言う女に、気を良くしたのかムスラルド侯と呼ばれる天竜人は、近くにいた役人へ耳打ちした。
「あの女を、ここへ引き上げるえ」
「はっ!」
バタバタ、と一気に黒い制服を着た役人たちが降りてくる。